2012/03/13

MINI House Project 6. 正しい断熱気密 その2

前回に引き続き、外張り断熱と充填断熱の違いについておはなしします。
どちらの方式でも適正な厚みとすることで、断熱性能には差がないことがわかりました。
ではそのほかの特徴はどうでしょうか。





【充填断熱は断熱材が垂れ下がる?】

結露といえば、冬を連想すると思いますが、仕組みを簡単に説明するとこういうことです。

「空気中の水蒸気が冷たいものに触れると、気体でいられなくなります。その結果、液体である水となったものが結露です。」


充填断熱に対して不安に感じる部分で、壁の中でグラスウールが結露して重くなり垂れ下がるのでは?という声を聞くことがあります。

確かに一昔前の住宅は、断熱に対して正しい知識がないまま作られたものが多く、断熱材が垂れ下がるような不具合がありました。壁内に入った水蒸気が外へ抜けるような構造になっておらず、冷たい外壁材の内側表面で結露し、断熱材がそれを吸ってしまうという仕組みです。

それに加えて、壁の厚みの半分しか断熱材が入っておらず、断熱材自体が自重で垂れ下がるためのスペース的な余裕があったことも要因のひとつです。しかも壁の中が断熱材で満たされていないため空洞となり、そこに小屋裏や床下から冷たい空気が流れ込みます。壁のボード一枚をはさんで外気と同じ温度の空気が流れているわけですから、これでは断熱材の意味がありません。

しかし現在では、そういった不具合の原因が分析され工法的に確立されています。
壁の中に断熱材をしっかりと充填したうえで、断熱層の室内側には気密シートを張り、室内の水蒸気が壁の中に入らないようになっており、万が一入った場合でも断熱層の外側に設けた通気層から水蒸気が抜けるような構成になっています。また、床下や小屋裏との境界には通気止めを設け、冷たい空気が壁の中に入らないような工夫がされています。




【柱や筋交いが断熱欠損になる?】

外張り断熱は柱の外側に切れ目なく断熱層ができますので、いわゆる断熱欠損ができにくい工法です。それに対し充填断熱は、柱・間柱・筋交などの部分に断熱材を充填できませんので、それを断熱欠損と考える方がいても不思議ではありません。



ですが木はとても優れた材料です。断熱材より低いとはいえ、木材そのものもある程度の断熱性能を持っています。木材の熱伝導率を断熱材と比較すると3倍ほどの数値ですので、断熱材のほうがもちろん性能はよいといえます。ですが、住宅全体の断熱性能を表す「Q値」の計算では、それらの数値も考慮しますので全体の断熱性能に問題はありません。また、現実的に柱の部分が結露するかというとそんなこともないのです。

充填断熱で最も重要なことは施工する際の精度の問題です。筋交いの形状に合せて断熱材をカットし、隙間なく施工することが重要です。断熱施工をしっかりと理解している大工は、実に丁寧に、ぴったりと施工します。

それに対し外張り断熱は熟練度がそれほど高くなくても、比較的施工精度を出しやすいというメリットがあります。




夏季の内部結露とは?】

壁内の結露は一般に冬のことを想定していますが、夏は逆転現象が生じるといわれています。それは次のような場合です。
外気温が高く蒸し暑い日
・エアコンによって室温と外気温との差が大きい場合
このようなとき、水蒸気を多く含んだ暖かい外気が外壁の中に入り、冷房によって冷やされた室内側の気密シートの表面で結露を起こすというケースです。

冬は断熱層の室内側の気密シートと、断熱層の外側の透湿シートが水蒸気をうまく制御しますが、夏はそれが困難になります。壁の中に入った水蒸気が室内側に抜けないからです。

そんなことを言うと不安に思われるかもしれませんが、一般的には心配するほどのことではありません。冬よりも夏の内外温度差は小さいため結露する量がさほどではないこと、また夜間に通気層から蒸発すること、などを考えると必要以上に心配することはない、というのが大方の見方です。

実際に充填断熱・築20年の気密と通気に配慮された住宅で、外壁材を取りはずして中を見たことがありますが、壁内結露の形跡、例えば柱が腐るとかカビが生えている、などの症状はまったくみられませんでしたし、断熱材もきれいな状態のままで特に問題はありませんでした。

では、外張り断熱の場合はどうでしょう。ボード状の断熱材が水蒸気を通さない気密層を兼ねていますので、その内側の柱部分にまで水蒸気が入り込むことはまずありません。なので内部結露は起きないといってよいでしょう。



【コストは?】

外張りはボード状の断熱材を柱の外側から長いビスで留めつけるので、厚い断熱材を使うと外壁材の重みで垂れ下がってしまいます。なので、できるだけ薄く、40~50㎜程度の材料を使用します。そのため充填断熱より性能の高い、発砲系の断熱材を使用しています。


充填断熱は柱の厚みを利用して、外壁と内壁の間に繊維系の断熱材を充填しますので固定自体に無理はありません。厚みも4寸柱の場合120㎜と、外張りの2倍から3倍の厚みにすることができますので、発砲系と比較するとコストの安い繊維系の断熱材を使うことができます。
一般的には充填系のほうがローコストと言えるでしょう。



【まとめ】

断熱方式の違いについて簡単にお話ししましたが、ここまで見る限り「外張り断熱」は素人にもわかりやすく、つっこみどころが少ない優れた工法であるといえそうです。単純明快な「外張り断熱」に対し、知識と熟練が要求される「充填断熱」という対比ができそうです。ですが一番大切なことは、最初にお話ししたようにどちらもきちんと施工すれば十分な性能を発揮する、ということです。

ちなみに断熱先進国の北欧の国々では、主に充填断熱が使用されています。性能でいえば日本の2倍くらいの超高断熱が法的に求められ、すでに普及している地域です。これは、コストの面と、製造~廃棄までのCO2排出量の面での採用と思われます。

もっと地球環境を重視したいという方には、ちょっと割高になりますが古紙を再利用した「セルロースファイバー」や、自然素材の頂点ともいえる「羊毛」などを充填工法で使用することもできます。


これらを理解したうえで何を選ぶかは人それぞれです。また、施工者によっては選択できないものもあるでしょう。いずれにしても予算と相談しながら自分の考え方にあったものを選択をすることが肝心です。



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