今回は、もう少し具体的に断熱のことをお話したいと思います。
一般的な木造住宅の断熱方法には、大きく分けて2種類のやり方があります。
「充填断熱」と「外張り断熱」です。
最近お客様とお話しするなかで、充填断熱よりも外張り断熱のほうが優れているのでは?
という質問をいただく場合があります。これには正しい部分とそうでない部分があります。両者には素材の違いによる特徴があり、それぞれにメリットとデメリットがありますので、そのあたりを知っておいたほうが良いと思います。
少し前にテレビのCMで、「外張り断熱でないと遅れている」 というものも見かけました。大手メーカーがマスメディアを駆使し、イメージ戦略を展開したものです。ユーザーが正確な知識であふれる情報を整理し、正しい判断ができれば問題はありませんが、そうでないのなら補足説明が必要です。そのあたりを両者の比較を交えてお話したいと思います。
【断熱性能】
まずは、基本的な問題である、「断熱性能」に差があるのか?というお話しです。
結論から言えば、差はありません。
一般に外張り断熱には発砲系のボード状のものを使います。
また、充填断熱には繊維系のものを使います。
外張り断熱はボード状の断熱材を柱(躯体)の外側に外から張り付けるのに対し、充填断熱は柱と柱の間、つまり壁の中に繊維状のものを充填します。
外張り断熱で使うボード状断熱材の厚みは一般に50㎜程度です。
それに対し、充填断熱で使う繊維状のものの厚みは100㎜程度です。
つまり、外張りの方が充填よりも厚みが薄いということです。
50㎜:100㎜ ですから2倍です。
なぜ半分ですむのでしょうか?
これを理解するには、「熱伝導率」と「熱抵抗値」について知っておく必要があります。
ちょっと面倒な用語がでてきますが、がんばってみましょう。
【熱伝導率 W/m・K】
まず、断熱材そのものの性能をあらわす「熱伝導率」です。
「内外温度差が1度で、面積が1㎡、厚さが1mのとき、1秒間にどれだけの熱が伝わるか」
という数値です。
熱の伝わりやすさを表すもので、数値が大きいほど熱を通しやすいということです。
また断熱材に限らず、すべての物質はこの「熱伝導率」について固有の数値を持っています。
235.000 アルミ
83.500 鉄
1.600 コンクリート
1.000 ガラス
0.580 水
0.120 木(杉・ヒノキ)
0.038 (充填用)高性能グラスウール16Kg
0.024 空気
0.020 (外張用)フェノールフォーム
これをみると、外張用のフェノールフォーム(旭化成のネオマフォーム)の熱伝導率は、充填用の高性能グラスウールのほぼ半分、つまり2倍の性能があることがわかりますね。
また、空気は意外と断熱性能が高いことがわかります。
それもそのはず、一般的な断熱材の性能は「空気をどれだけ動かさずに保てるか」ということにかかっているからです。
洋服を重ね着するのも「動かない空気」をたくさん作りたいからなのです。
【熱貫流率 W/㎡・K】洋服を重ね着するのも「動かない空気」をたくさん作りたいからなのです。
次に、断熱材の厚さを考慮した性能をあらわす「熱貫流率」です。(U値)
「内外温度差が1度で、面積が1㎡、ある厚さのとき、1秒間にどれだけの熱が伝わるか」
という数値です。
これも数値が大きいほど熱を通しやすくなります。
熱伝導率と違うところは、具体的に「厚み」を考慮していますので、現実的な壁としての性能が比較できるところです。
現在、一般的に使われている断熱材を比べてみましょう。
(充填用)高性能グラスウール16kg 厚さ100㎜(=0.10m)
(外張用)フェノールフォーム 厚さ 50㎜(=0.05m)
として計算してみます。(単位をそろえるため、mに換算しました)
熱貫流率(U値)=1/厚さ÷熱伝導率 で求められます。
高性能グラスウール16kg
U値=1/(0.10m÷0.038W/m・K) ≒ 0.38W/㎡・K
フェノールフォーム
U値=1/(0.05m÷0.020W/m・K) ≒ 0.40W/㎡・K
このようにグラスウール100㎜と外張断熱材50㎜は、ほぼ同じ熱貫流率になります。
つまり、断熱性能には差がないということです。
充填断熱で4寸柱であれば、120㎜の断熱材を充填することができますので、U値=0.32W/㎡・Kとなり、外張りで同じ性能を出すには63㎜の厚みが必要になります。
これでわかるように、断熱材の断熱についての性能は「熱伝導率と厚さ」で決まります。
つまり充填断熱も外張断熱も、同じ性能を出すことができますし、厚みを増せばどちらも性能を上げることができるのです。
次回は、もうその他の部分について比べてみます。
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