2012/03/04

MINI House Project 6.正しい断熱気密 その1

前回の MINI House Project 5 では、住宅の表面積を最小にするという提案の中で、Q値とC値についてお話ししました。
今回は、もう少し具体的に断熱のことをお話したいと思います。









一般的な木造住宅の断熱方法には、大きく分けて2種類のやり方があります。
「充填断熱」と「外張り断熱」です。

最近お客様とお話しするなかで、充填断熱よりも外張り断熱のほうが優れているのでは?
という質問をいただく場合があります。これには正しい部分とそうでない部分があります。両者には素材の違いによる特徴があり、それぞれにメリットとデメリットがありますので、そのあたりを知っておいたほうが良いと思います。


少し前にテレビのCMで、「外張り断熱でないと遅れている」 というものも見かけました。大手メーカーがマスメディアを駆使し、イメージ戦略を展開したものです。ユーザーが正確な知識であふれる情報を整理し、正しい判断ができれば問題はありませんが、そうでないのなら補足説明が必要です。そのあたりを両者の比較を交えてお話したいと思います。


【断熱性能】

まずは、基本的な問題である、「断熱性能」に差があるのか?というお話しです。

結論から言えば、差はありません。


一般に外張り断熱には発砲系のボード状のものを使います。
また、充填断熱には繊維系のものを使います。

外張り断熱はボード状の断熱材を柱(躯体)の外側に外から張り付けるのに対し、充填断熱は柱と柱の間、つまり壁の中に繊維状のものを充填します。

外張り断熱で使うボード状断熱材の厚みは一般に50㎜程度です。
それに対し、充填断熱で使う繊維状のものの厚みは100㎜程度です。
つまり、外張りの方が充填よりも厚みが薄いということです。
50㎜:100㎜ ですから2倍です。
なぜ半分ですむのでしょうか?

これを理解するには、「熱伝導率」と「熱抵抗値」について知っておく必要があります。
ちょっと面倒な用語がでてきますが、がんばってみましょう。


【熱伝導率 W/m・K】

まず、断熱材そのものの性能をあらわす「熱伝導率」です。

「内外温度差が1度で、面積が1㎡、厚さが1mのとき、1秒間にどれだけの熱が伝わるか」
という数値です。

熱の伝わりやすさを表すもので、数値が大きいほど熱を通しやすいということです。
また断熱材に限らず、すべての物質はこの「熱伝導率」について固有の数値を持っています。

235.000   アルミ
 83.500   鉄
  1.600   コンクリート
  1.000   ガラス
  0.580   水
  0.120   木(杉・ヒノキ)
  0.038   (充填用)高性能グラスウール16Kg
  0.024   空気
  0.020   (外張用)フェノールフォーム


これをみると、外張用のフェノールフォーム(旭化成のネオマフォーム)の熱伝導率は、充填用の高性能グラスウールのほぼ半分、つまり2倍の性能があることがわかりますね。

また、空気は意外と断熱性能が高いことがわかります。
それもそのはず、一般的な断熱材の性能は「空気をどれだけ動かさずに保てるか」ということにかかっているからです。
洋服を重ね着するのも「動かない空気」をたくさん作りたいからなのです。



【熱貫流率 W/㎡・K】


次に、断熱材の厚さを考慮した性能をあらわす「熱貫流率」です。(U値)


「内外温度差が1度で、面積が1㎡、ある厚さのとき、1秒間にどれだけの熱が伝わるか」
という数値です。

これも数値が大きいほど熱を通しやすくなります。
熱伝導率と違うところは、具体的に「厚み」を考慮していますので、現実的な壁としての性能が比較できるところです。

現在、一般的に使われている断熱材を比べてみましょう。

(充填用)高性能グラスウール16kg 厚さ100㎜(=0.10m)
(外張用)フェノールフォーム      厚さ 50㎜(=0.05m)

として計算してみます。(単位をそろえるため、mに換算しました)



熱貫流率(U値)=1/厚さ÷熱伝導率  で求められます。



高性能グラスウール16kg

 U値=1/(0.10m÷0.038W/m・K) ≒ 0.38W/㎡・K


フェノールフォーム

 U値=1/(0.05m÷0.020W/m・K) ≒ 0.40W/㎡・K


このようにグラスウール100㎜と外張断熱材50㎜は、ほぼ同じ熱貫流率になります。
つまり、断熱性能には差がないということです。

充填断熱で4寸柱であれば、120㎜の断熱材を充填することができますので、U値=0.32W/㎡・Kとなり、外張りで同じ性能を出すには63㎜の厚みが必要になります。


これでわかるように、断熱材の断熱についての性能は「熱伝導率と厚さ」で決まります。
つまり充填断熱も外張断熱も、同じ性能を出すことができますし、厚みを増せばどちらも性能を上げることができるのです。


次回は、もうその他の部分について比べてみます。


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