2012/01/14

MINI House Project 3.「東西の壁」と「南の軒」

さて、これから具体的に「MINI ハウス」を組み立てていこうと思いますが、まず始めは「太陽」との付き合い方についてまとめてみましょう。

太陽の日射が私たちの生活環境に与える影響の大きさは、あえて言う必要もないと思いますが、この膨大なエネルギーを制御できるかどうかは、その建築の基本性能にもっとも大きくかかわることです。











結論から言うと、夏の日射はできる限り室内に入れないように、また冬の日射は積極的に室内に取り込むことが大切です。太陽光に照らされた室内の床や壁は蓄熱体となり、貯めた熱がなくなるまで放熱します。床暖房をつけているのと同じ状態になりますから、夏は暑くてたまりません。当然これは避けるべきです。逆に冬は積極的に利用しましょう。


そしてこのときに重要なのは、日の出から日の入までの太陽の動き、特にその高さ(太陽高度)です。なぜならその高さによって室内への日射の角度が違うため、それを制御する方法も変わってくるからです。


では具体的な方法を考えてみたいと思いますが、注意しなければいけないのは、一日のうちでも時間帯によって考え方が異なるということです。

まずは太陽の動きからおさらいしてみましょう。


<太陽の動き>

1.朝晩
夏の朝晩の太陽は他の季節より、かなり北のほうから上ります。つまり朝は東から(夕方は西から)長い時間、日射をあびることになります。昼間の太陽に比べれば日射そのものは大気中を長く通過する分だけ少し弱くなりますが、真横から長時間、容赦なく室内にはいりこんでくる熱はかなりのエネルギーとなります。

2.昼間
夏の昼間の太陽は冬に比べ、とても高い位置にあるのはご存知の通りです。それは地球の自転軸が公転面に対して傾いているからです。小学校の理科で習いましたね。より高い位置にある太陽の日射は、大気中を最短距離で地上に達するため、とても強い日差しとなります。


余談ですが、夏の西日が午前中に比べて暑く感じるのは、室内の蓄熱の状態が異なるからです。つまり朝は建物がある程度冷えているため、真横から太陽をあびても室温はそれほどあがりません。それに対し、西日の当たるころは日中に受けた日差しで建物の内外がすでに蓄熱状態にあります。その熱に加えて、西日が追い打ちをかけるために暑く感じるのです。このあたりは建物の材料、特に断熱のやり方にも関わってくる部分ですがこれについては後日改めて。


さて、同じ太陽でも一日の時間帯で建物に与える影響が変わってくるということがわかりました。では、それを制御するにはどうすればよいでしょうか。


<日射のコントロール>

1.朝晩の東西からの日射
【夏至】 午前10時
太陽高度はすでに63度にもなる
これを防ぐ方法はいくつか考えられますが、MINIハウスプロジェクトでは根本的に日射を防ぐやり方、つまり「東西に壁を立てて日射を遮る」という方法をとることにします。

真横から差す日差しを遮るため東西に2枚の壁を立て、その間を居住スペースにするわけです。

その壁に窓を設ける場合は、必要最小限として朝晩の日射の侵入を抑えることにします。


2.昼間の強い日射

夏の強い日射は、建物の南側に深い「軒」をつくることで防ぎます。日本人が昔から採用していたやり方です。外でさえぎるということが大切で、太陽光線がもつ大量の熱を一度室内に取り込んでしまうと、それを空調で冷やすには無駄なエネルギーを使わなければなりません。なので日射が室内に入る前に外部で遮断することが重要なのです。


ちなみに下の画像は冬至と夏至、それぞれ同じ時刻で太陽高度の差がどのくらいあるかをシミュレーションしたものです。右上の数字は太陽高度(地面と太陽の角度)で、温度ではありません。

午前8時






左:冬の朝8時、太陽高度が9度だと、太陽がやっと顔を出すころですが・・・
右:夏の朝8時、太陽はすでに40度の高さにあり東の壁を照らしています。



午前10時











左:午前10時、冬至の太陽高度はやっと24度で、室内に日差しが入りました・・・
右:夏はまだ東面を照らしています



正 午
左:冬は室内に日差しが差し込み、室内に蓄熱します。
右:夏の強い日差しが室内に入る前に軒でさえぎります。



午後2時











左:まだ室内に日が差しています。
右:すでに強い西日が西の壁を照らしています。



午後4時











左:すでに地平線に沈みかけています。
右:太陽高度35度、まだまだ強い西日が真横から照り付けています。



影の長さを見ると、「東西の壁」と「南側の軒」の威力がわかると思います。

とはいっても、どうしても東西にも窓を設けたい場合があります。すでにお分かりのように東西の日差しは真横から差し込み、「軒」で遮ることは難しいため他の方法で対処します。

開口部の面積はできるだけ小さくし、窓の外で日射を遮断することが大切です。なぜなら一度侵入した熱は室内に蓄熱してしまうからです。具体的には外付けのルーバーや、昔ながらのすだれなどを取り付けますが、最近では遮熱タイプのLow-eガラスで熱線を反射する方法も効果的です。

これで夏の日差しは防げましたが、その反面、冬は寒くなるんじゃないの?と思うかもしれません。ですが、冬の太陽は昼間でも低い位置にありますから、南の日差しは深い軒があっても、しっかりと部屋の奥まで差し込みますので心配はありません。

また、冬の太陽は、夏より南側から上り、南側に沈みます。そのため東西の窓にはそれほど長い時間日射が当たりませんし、太陽高度も低いため、東西の窓からの熱取得はそれほど期待できません。それよりも夏のことを優先的に考えようということです。




長くなったので少し整理してみましょう。太陽のエネルギーをうまく使いつつ、冷房・暖房の負荷を減らすには 「東西に2枚の壁を立て、夏は日射を防ぎ、冬は南から日射を採る」という形が理にかなっているようです。

<注意>これらはもちろん、敷地の方位や周囲の建物などの影響によって異なります。ですが敷地は一つ一つ違うもの。今回はある程度、条件を想定して進めて行くことにしましょう。仮に敷地の条件が困難な場合でも、悲観することはありません。必ず解決策がありますし、逆にそれが個性的な建物のきっかけにもなったりします。また、それを考えるのが私たち設計者の仕事です。難しいほど燃える(?)といってもよいでしょう。


というわけで、次回は太陽光発電の話しをしたいと思います。

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