2003/12/31

理想的な家って?

理想的な家ってどんな家でしょうか。

自分の希望を即答できる人はかなりの研究家、あるいは希望をはっきり持った人といえるでしょう。大部分の人が思い浮かべるのは、北欧風の家や純和風の家、自然素材の家、というような漠然としたイメージだと思います。

確かにそういう分類方法もあります。しかしそれだけで本当にいいのでしょうか?

家を持つということは通常一生に一度の大きなイベントです。今後数十年に渡ってその建物のためにローンを払い続けていくことになる、大事な意思決定の場面です。本当に満足する家をつくるには、自分自身の人生観・価値観・家族観・哲学・趣味・嗜好をもう一度見つめ直す必要があるはずです。
自分が何をしたいのか、その家に何を求めるのか、多少の時間をかけてでも考える価値、というよりは必要があるのです。また、そのチャンスは計画段階、そう、今しかないのです。



自分達にとって理想的な家とは、自分たちが思い描く理想的な暮らしができる家のことをいいます。理想的な暮らしとは、その家族の価値観や生活形態にあった暮らし方ということです。少々大げさに聞こえるかもしれないが、難しいことではありません。

順を追って考えてみましょう。まず、今の生活でなんとなく感じている不満や、不便なところをピックアップしてみます。そこは最低限クリアしましょう。
そのうえで、自分達の趣味や興味のあること、やりたいことを思い浮かべ、整理してみてください。たくさん出てもかまいません。
それらに優先順位を付け本当に必要なものを選び出すのです。

しかし現実はそう簡単にはまとまらないはず・・・。
なぜなら、家族全員がまったく同じ価値観をもっていることなどありえないからです。
どこかで誰かの妥協が必要です。誰の意見が反映されるのか?奥さんはどこの家庭でも強いようですし・・・。でもお父さんも頑張ってください!
ケンカになる場合もあって当然です。それくらい気合を入れて考えてみましょう。

そして苦労して選び出したものをキーワードにするのです。キーワードを持った家(家族)は強いのです。なぜなら、目的が明確になるからです。それは家族全体に共通の目的です。
あとはキーワードを形にすればよいのです。ここは私たち設計者の得意とするところです。思いっきり設計者にぶつけてみてください。方針が決まればそのための建築的な仕掛けはいくらでもあるのです。

要はどう暮らしたいかということです。多様化するこの時代にあって、決まりきった間取りや外観だけではなく、あなたとその家族のライフスタイルを反映した家をつくるべきなのです。なんとなく、よく考えず、言われたままにできてしまった結果、後で後悔することだけは避けなければなりません。



日々の生活とは与えられるものではないのです。つまりどう暮らすかという「目的」があって、はじめてその「手段」である「家」というものの形が見えてきます。具体的な希望がある人もいるでしょうし、漠然とした夢を持つ人もいるでしょう。それがその人の価値観ですから、その価値観にあった家をつくればよいのです。
そんなこと考えたこともない、という人はこの機会に是非考えてほしいのです。家族会議でも開いてみましょう。

そんなことは無駄じゃない?と思う人は、メーカーのカタログで選んで 「買う」ことをお勧めします・・・ 。

家は「住むための道具」であり、いくつもの機能を備えています。技術的なことは置いておいて、最も重要なことは、その中で生活する"人間の位置関係"であるといえます。家というものが家族という人間のグループを収める道具である以上、家族同士の距離感をどうとるか、またどう制御するかということは避けて通れない最重要課題なのです。

そこには当然その家族の構成や価値観が反映されます。いい機会だから考えてみましょう。つまり、どういう家をつくるかということは、どういう人間関係をつくるかということなのです。もっといえば理想的な家とは、その家族にとって理想的な人間関係そのものであるといえます。その人間関係が象徴的に形となって現れたものが家という空間なのです。

そのくらい「家」と「人間関係(家族関係)」とは密接にかかわっているのです。だから家は商品のように買うものではなく、つくるものなのです。そしてそのプロセス(過程)にかかわることは、めったにできない貴重な体験として、1人ひとりの記憶にインプットされることでしょう。

理想的な家とは工事が終わって引渡されたときに「御対面」するものではないのです。設計段階から意見を交わしあい、いろんな可能性を探りながら考え方をしぼっていき、できれば工事に参加して自分の手を汚し、汗をかき、ものづくりの楽しさと完成させることの喜びを体験するべきなのです。

そうやってつくりあげた家で実際に生活する・・・。協力してつくりあげるというプロセスを体験することができれば、まさにそれが理想的な家、そして理想的な家づくりといえるのはないでしょうか。

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