2012/02/15

MINI House Project 5.カタチとしての省エネルギー

四季の変化が大きな日本。
季節ごとの風景や、旬の食材を楽しむことができる素晴らしい環境です。
春の穏やかな日差しや、秋の涼しい風を感じる一方で、高温多湿の夏と、強い季節風の冬も私たちの目の前にある現実です。
そのためには何らかの暖房、場合によっては冷房の力が必要です。
暖房や冷房をするにはエネルギーが必要ですが、なるべくなら必要最小限に抑えたいものです。

というわけで、今回は建物の形と省エネルギーとの関係についてお話ししたいと思います。











【Q値・C値】

Q値・C値という言葉をご存知の方も多いと思います。
建物の省エネルギー性能を具体的に表す指標です。

Q値は 「熱損失係数」 といって、建物の断熱性能を数値で表しています。
「熱損失」・・・つまり熱が奪われる度合いを数値化したものですから、小さいほうが性能がよいということになります。
計画する建物の熱損失は、各部分の仕様とその面積を計算することで求めることができます。

ちなみに次世代省エネ基準では、Q値の目安を地域ごとに定めており、気象条件によって全国をⅠ〜Ⅵの地域に分けています。

Ⅰ地域(1.6W/m²K)・・・北海道
Ⅱ地域(1.9W/m²K)・・・東北地方
Ⅲ地域(2.1W/m²K)・・・新潟の山間部はこれに当たります
Ⅳ地域(2.4W/m²K)・・・新潟市などの平野部はここです
Ⅴ地域(2.7 W/m²K)・・・東京以西
Ⅵ地域(3.7 W/m²K)・・・沖縄

それぞれの地域でQ値を上記の数値以下にすることが推奨されています。
上記の数値をクリアすることは、住宅をつくる上ではすでに必須条件となっており、より断熱性能の高い住宅が求められています。

それに対しC値は 「隙間相当面積」 といって、建物のスキマの多さを表した言葉です。
これも、Ⅰ・Ⅱ地域では2.0cm²/m²以下、Ⅲ以西は5.0cm²/m²以下に設定されています。
これは計算ではなかなか求めることが難しいのですが、実際の建物で計測を行うことで数値化できます。

これもすでにクリアすることは容易な数値ですが、単に高気密化をするだけでは不具合が生じますので、使用する素材や暖房方式、換気の経路などを適切に計画することが必要です。


【省エネの手段】

さて、ここからが本題ですが、建物を省エネ化する方法はいくつか考えられます。

・壁や天井、床の断熱性能を上げる方法
・開口部の断熱性能を上げる方法
・気密性能を上げる方法
・換気による熱損失を小さくする方法

などが一般的です。


これらはすべて、冷暖房のエネルギーを抑える手段としてQ値・C値を小さくすること、つまり「器」の性能をあげることを念頭においています。
その他にも、冷房や暖房、給湯機器の効率を上げる、あるいは太陽光や地熱エネルギーを利用する、などの方法もありますが、今回は主に建物の性能にしぼってみます。

断熱であれば厚みを増すことで熱が逃げる量を減らすことができる、ということは容易に想像できると思います。
開口部であればより性能の高いサッシやガラスを使うことで、換気であれば熱交換の効率の高い換気システムを使うことで性能を上げることが可能です。
また、熱交換換気をするならなるべく多くの熱を交換したいですから、熱交換器を通さない隙間風を減らすために気密化は必須です。


これらはどうしてもコストアップにつながりますが、掛けるコストと得られる性能のバランスを見極めることが大切です。



【カタチとしての省エネ】


もっと根本的な部分で省エネを考えると、見えてくるものがあります。
建物のカタチとしての省エネです。

結論から言えば、もっとも効率的なのは「建物自体の表面積を小さくする」ことです。

先ほどの「Q値」は「建物全体の熱損失」を「床面積で割ったもの」です。
外気に触れる面積が多ければ多いほど熱損失は大きくなりますから、同じ床面積を想定した場合、表面積が大きいほどQ値(熱損失)は大きくなります。

逆に小さければ奪われる熱も小さくてすむことになります。
うちのネコもそのことをよく知っていますので、冬は手足を曲げてまるくなっています(笑)。


究極的には球体が最も優れているということになりますが、地上で作ると転がってしまいますし(?)、住宅のスケールでは内部に無駄がでてきますので実現的ではありません。
そうなると、凹凸のない四角い箱(平面的には正方形)が理想に近そうです。

もちろん、中庭を囲むような「コの字型」や「ロの字型」の住宅は、とても豊かな空間となるので僕も大好きですし、そんな家をよく設計しています。
ですが今回の目的は、究極の「MINIハウス」を計画するということですので、そこは機能優先でいくことにしましょう。

というわけで、外観はシンプルな四角い箱を採用します。

それは南向きに配置され、
東西には夏の日差しをさえぎるための2枚の壁を持ち、
昼間の日差しを防ぐ深い軒、
そして太陽光パネルを載せるための4寸勾配の屋根がのっかっているという形です。

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