2006/12/31

音楽≒建築

中学生の頃、私のそれまでの音楽観を変えるような出来事がありました。
それはあるグループとの出会いでした。

いつものように何気なくTVを見ていた私の耳に、聞いたことのないような不思議な音とメロディーが、聞こえてきたのです。その瞬間、頭の中の脳ミソがブラウン管の中に溶け込んでいくような感覚に陥ったことを今でも覚えています。

日本人なのに外国でメジャーになり、歌は英語で、着ている衣装は人民服、といえばご存知の方もいらっしゃるでしょう。

YMO:Yellow Magic Orchestra

世界中で爆発的にヒットしたこのバンド。当時珍しかったシンセサイザーを音源に、シーケンサーと呼ばれるコンピュータープログラミングで演奏するという、画期的(?)な手法を駆使し、音楽というものの概念を変えたのは、細野晴臣、坂本龍一、高橋ユキヒロという三人の変なおじさんたちでした。


その不思議な魅力にはまってしまった私は曲をコピーし、友人と一緒に学校の音楽室のピアノを弾くようになりました。弾くといってもピアノが弾けるわけではありませんでしたから、片手でできる程度のものです。それを三人で弾くと、なんとなくハモッてそれっぽく聞こえるのがおもしろかったのです。

それをするためには、曲をよく聴いて、そこで使われている音の構成をひとつずつ探り出さなければいけません。いわゆる『耳コピー』というものですが、よく聞くとあそこでこんなフレーズが聞こえてくる・・・というようなことをよくやったものでした。

最終的に、スコア(楽譜)を買ってきて検証をしてみると、それまでなかなかわからなかった部分が出ていたので、『おお~っ!』ということになったのでした。
ジャンルによって多少の違いはありますが、クラシックもロックも基本的には似たような構成です。

安定したリズムを刻む打楽器やパーカッション、
バスドラムとリンクして低音で曲の安定感をかもし出すベース、
コードをつくり全体の雰囲気を左右するサイドギター、キーボード、ストリングスやコーラス、
曲の印象を決定づけるメロディーを奏でるボーカルやリードギター。
これらのパートがかみ合って初めて美しい曲、心に残る曲ができるのです。



それ以来、音楽を演奏するということの快感を知ってしまった私は、高校に入ってからはろくに勉強もせず、もっぱらFMラジオで好きな洋楽を『エアチェック』(ん~なつかしい響き!)する日々を過ごしていました。

新聞の週間予定で録音したい曲を見つけ、カセットテープに『ドルビー』をかけてとりました(これをするとノイズが減るんだよねー)。当時は80年代まっただ中、洋楽が好きでニューウェーブ、ロック、パンク、ヘビメタ、ポップスなどなんでも聞きました。歌詞がわからない分、『音』そのものが私の興味の対象でした。

学園祭には友人とバンドを組んで出たりもしました。はじめは下手くそなキーボードでしたが、バンド仲間のギターをさわっているうちにその魅力にはまってしまいギターをやるようになりました。(弾くというレベルではなかったですが・・・。)

大学時代はMMCという音楽系のサークルで活動していました。いくつかのバンドを組みましたが、一時期オリジナルの曲を作って演奏していた時期がありました。

三人のユニットでボーカル兼キーボード、ベース、そしてギター(私)という構成で、ドラムは機械を使っていました。気持ちよいけど力強い、必要最小限のシンプルな音源で音が絡み合うような曲を作りたくて熱中していました。作り始めると時間の感覚がなくなり、気がつくと徹夜でフラフラ状態になったものです。

ちょうどそのころ大学の本業では建築の設計に係わるようになっていた時期で、設計の課題も締め切りが近づくと徹夜になり、よく(ダブルで)フラフラ状態になったものでした。



そのような日々を過ごす中でつくづくこう思いました。
『建築の設計は作曲に似ている・・・』と。

もちろん、フラフラになることだけでそう感じたのではありません。曲を構成するパート、これは建築を構成するパーツによく似ていると感じたのです。

リズムを刻むドラムは建築のグリッドや構造体の連続性に、
安定感をかもし出すベースラインは構造的に大切な基礎や土台や床の構造などに、
雰囲気を左右するサイドギターやキーボードは壁や天井、外壁のテクスチャーに、
曲の印象を決定付けるボーカルは建物のプランニングや窓の取り方そのものという具合に・・・

なんとなく三次元的な広がりを感じるところが似ているのです。それぞれのリズムやメロディーをどのように組み合わせれば心地よいラインが生まれるか、それは機能的で気持ちよい空間を生み出すプロセスと非常に似た感覚なのです。

また、イントロから始まり、メロディーラインを印象付けながら、サビで盛り上げるような音の構成も、建築に例えることが出来ます。

敷地に足を踏み入れてからアプローチを通りぬけ、玄関に立ち、扉を開けた時の感覚、そして最も気持ちのよい空間に入ったときの印象など、時間と共に変化していく感動にとてもよく似ています。
音楽の持つ『三次元の空間の広がり』と『時間の変化』は、まさに建築を構成するエレメントといえるのです。好きな『建物』のなかで好きな『音楽』を聴く・・・、私にとって、これはまさにゼイタクな時間の過ごし方なのです。


※ちなみに今、ヘッドホンから聞こえている曲は当時エアチェックした『XTC』の『Generals And Majors』です(かっこいい・・・)。あ、『JAPAN』の『Quiet Life』にかわりました。静かな音の構成がいいですね~。JAPANはそのルックスからミーハーバンドっぽく言われていましたが決してそんなことはありません。(ミック・カーンのフレットレスベースはすごいんです。)

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