2012/05/06

MINI House Project 8.熱源をコストで比較すると・・・

最近では、住宅の熱源について新しい技術が実用化し、各機器メーカーやエネルギー企業からさまざまな方式が提案されています。

ヒートポンプと呼ばれる技術で、使用する電力の5~6倍の熱を利用できるもの、
究極の天然資源である太陽光を電気に変える太陽光発電、
ガスでエンジンを回し、発電しながら余熱でお湯を沸かすエコウィル、
天然ガスからできる水素と空気中の酸素を元に、電気分解の逆方式で水と電気を発生させるエネファーム・・・

一昔前までは未来の技術と思われていたシステムが、すでに身近なものになりつつあります。





各熱源の供給企業は消費者にエネルギーを継続的に使ってもらうことで成り立っていますので、各社独自のシステムを開発しアピールしています。
ランニングコストの安い機器は、たいていイニシャルコストが高いものです。
また、その逆でイニシャルコストが安い機器はランニングコストが高いものです。
イニシャルもランニングも安ければ誰もが採用するでしょうが、そんな夢のようなものは現実には存在せず、実際は一つの方式に集中することなく共存しているのが今の世の中です。
新しい機器のなかにはメンテナンス時期がきたときの交換のコストがはっきりしていないものもありますので、本当の意味でのトータルコスト、ライフサイクルコストが明確ではないように感じます。数十年使ってみた結果、お得かもしれないし、それほど差がないのかもしれません。

現時点で技術が確立しているシステム、例えばガス給湯器は比較的安心して採用できます。エコジョーズは効率もよいですし機器の寿命や入れ替えのコストもはっきりしています。

また、エコキュートはエアコンと同じようなヒートポンプユニットでお湯を沸かしますので、単純な構造のタンク部分よりも、ヒートポンプの部分が早く寿命を迎えるはずです。現段階では故障の際の交換費用についてはケースバイケースのようですが、設置から10年~15年くらいで次々と交換の時期がくることになります。その際、ユニットのみの交換ができるのか、また、それにかかるコストがいくらなのか、その辺りがはっきりしていないのが少し気になります。



今日の本題に入ります。
前回、エコジョーズとエコキュートは効率でいえば同じくらいと説明しました。
ではコストで比較するとどうでしょう。
比較しやすいように、1円で買うことができる「熱量」で比べてみましょう。

電気の場合、最小単位の1kwhの熱量が        860kcalで、24円
都市ガスは、最小単位の1m3の 熱量が10,750kcalで 、140円
灯油の場合、最小段位の1L  の  熱量が    8,770kcalで、100円(配達料込み)
として計算してみます。

1円で買うことができるエネルギーの熱量は、
電気   35.8kcal/円(        860kcal/ 24円)
ガス   76.7kcal/円(10,750kcal/140円)
灯油   87.7kcal/円(    8,770kcal/100円)
となります。

ここまでは純粋なエネルギーのはなし。
各家庭で実際に給湯器でお湯を沸かす場合、機器の効率を考慮する必要があります。
そこで出てくるのが前回もお話ししたCOPです。
では、上記の数字にCOPを掛けてみましょう。


1円で得られる熱量は、
電気(エコキュート)   35.8kcal/円 × COP2.50= 89.5kcal/円
ガス(エコジョーズ)   76.7kcal/円 × COP0.95= 72.8kcal/円
灯油(エコフィール)   87.7kcal/円 × COP0.95= 83.3kcal/円
となります。

エコキュートの実働COPは前回お話しした2.5で計算しました。
この場合、かろうじてエコキュートに軍配があがりますが、ヒートポンプは外気温が0℃以下では効率が落ちるため、寒冷地ではもう少し低くなると思われます。

以外とよかったのは石油給湯器。
コスト変動のリスクのために敬遠されがちですが、寒冷地では安定した能力を発揮しますので検討の余地はありそうです。

また、都市ガスのほうも暖房を含めた契約方式で割引プランを用意している場合がありますので、上手に利用するとコストダウンになるでしょう。

もうひとつ、エコキュートについての補足です。電気料金を24円としましたが、深夜電力の契約を結べば、8~9円になりますから料金としては1/3になる計算です。こうなるとガゼン有利になってきます。ただし原発がとまった今、深夜電力というシステムの行く末は不透明といわざるを得ません。




大震災以降、消費側にはエネルギーの節約が、エネルギー企業側には安定した供給が求められています。太陽光やその他のシステムも含め、エネルギーは今まさに新しい時代への過渡期にあるといえそうです。

細かく考え始めると、なかなか結論は出ないと思います。ですがこのことで頭を悩ます必要はありません。最初にお話ししたように、イニシャルとランニングを含めたトータルコストはそれほど差がありませんので、敷地の状況や使い勝手などで決めれば大丈夫です。
10年~15年後には機器の寿命が来るでしょうから、そこで検討して入替えができるようにしておけば何も問題はないのです。






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