2012/04/29

MINI House Project 8.効率のよい給湯方式は?

<エコキュート VS エコジョーズ、どっちが高効率?>

家庭で給湯に使われるエネルギーといえば電気、都市ガス、灯油が一般的です。
そもそも、これらのエネルギー効率を比較するとどうなるのでしょうか?



まず電気についてですが、原発に依存できなくなった今、火力発電所で燃やされる燃料に対して発生する電力は、エネルギー換算で40%程度と言われています。つまり石炭などを燃やした熱エネルギーで蒸気を発生し、タービンをまわして発電するときに6割のエネルギーをロスするということです。そこから各家庭に送電する際の送電ロスが10%程度すると、
40%×0.9=約36%の効率となります。

それに対し、都市ガスや灯油は燃料の状態のままで各家庭に届けられ、家庭内の機器で燃やしますから機器の燃焼効率(機器によって違う)がそのままエネルギー効率となります。


では機器の燃焼効率はどうやって比較するのでしょうか。
ここでCOPという言葉が登場します。
ご存知の方も多いと思いますが、冷暖房や給湯器のエネルギー効率をあらわす指標です。
その機器が使用するエネルギーを「1」として、実際に得られる熱量を数値であらわしたものです。
代表的なものをあげてみましょう。

COP  0.80     ガス給湯器  (従来の一般的なガス給湯器)
COP  0.95     エコジョーズ(廃熱を利用した高効率なガス給湯器)
COP  0.95     エコフィール(廃熱を利用した高効率な灯油給湯器)
COP  4.50     エコキュート(電気ヒートポンプ式の給湯器)

つまり、得られる熱量は熱源1に対し、0.8〜4.5となります。
これだけみるとエコキュートはすごい!と思います。ちょっと高いけど地球環境のために導入しようか、という気にもなります。

でも、ここで注意しなければいけないのは、カタログに記載してあるCOP4.5は発熱機器そのものの性能だということです(定格COP)。深夜電力をつかった機器は、夜間の安い電力でお湯を沸かして貯湯タンクに貯めておくため、その熱ロスはタンクの断熱性能に依存しています。つまり4.5の効率でお湯を沸かすけれど、使うまでにタンクから熱が逃げるため実際の熱効率はもっと低いということです。

それらを含めた実働COP(システムCOP)は、広島大学の村川三郎名誉教授が行った調査によれば平均で1.8程度、また、電力会社が行った調査によれば、平均で3.2程度になるという結果が発表されています。コレを考慮すると、

COP     0.80     ガス給湯器 (従来の一般的なガス給湯器)
COP     0.95     エコジョーズ(廃熱を利用した高効率なガス給湯器)
COP     0.95     エコフィール(廃熱を利用した高効率な灯油給湯器)
実働COP2.50     エコキュート(1.8と3.2の真ん中をとって2.5にしてみます)

となります。
まだエコキュートが優勢ですが、ここで最初にお話しした発電効率<36%>が登場します。
電気も元はといえば化石燃料を使いますから、それを燃やすところから実際に家庭で給湯するところまでを考慮すると、

実働COP2.50 × 発電効率36% = 0.90 となります。
改めて整理してみましょう。

COP   0.80  ガス給湯器 (従来の一般的なガス給湯器)
COP   0.95  エコジョーズ(廃熱を利用した高効率なガス給湯器)
COP   0.95  エコフィール(廃熱を利用した高効率な灯油給湯器)
換算後   0.90   エコキュート(発電効率36%・実働COP2.5のとき)

これをみるとエコキュートとエコジョーズ、エコフィールは大差ないことがわかります。条件次第ではありますが、実働COPが電力会社の実験平均値3.2になれば、換算後でCOP1.15となり、エコジョーズ、エコフィールに軍配があがります。

年々上がっていくエコキュートのCOPを見て、すごいなぁと思っていましたが、よく調べると上記のような数値がでてきます。
もちろん電気温水器に比べればはるかに効率が良いですし、優秀な機器であることに間違いはありません。ですが、定格COPだけを見て、「エコキュートはガス給湯器より何倍もエコだ」というような認識は間違いということになります。

都市ガスを燃やすエコジョーズと灯油を燃やすエコフィールのCOPは、どんなにがんばっても上限で1.0ですからすでに限界に近くなっています。それに対し、エコキュートの貯湯タンクの断熱性能はまだまだ上がる余地があります。エコキュートが本当の意味でエコになるのはこれからなのです。


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